大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)141号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。

1 引用例記載の技術内容の誤認について

引用例に記載されたものの審決の認定のうち「該網の裏面には、前後方向に長くそれ自体は動くことのないゴム片を接触させて取付けた」点の中の「前後方向」が「左右方向」の誤りであることは、当事者間に争いのない事実であるが、前掲審決理由の要点にかんがみ、成立に争いのない甲第三号証により引用例の技術内容を検討すれば、審決は選別板の目詰まり防止の点から、その往復揺動運動と直交する位置関係として、ゴム片(9)を添着した渡片(10)の「左右方向」の列設方向を「前後方向」と取り違え、表現したものであつて、後記認定のとおり、本願発明の進歩性判断の根拠として把握した趣旨に結論としてもとるところはないから、この技術内容の誤認を以て審決の判断の違法の事由とすることはできない。

2 進歩性の判断について

原告は、本願発明の特徴は、選別板の裏面に、それ自体は動くことのないブラシを前後方向に接触させて取付ける構成によつて、これと直交する最も簡便な選別板の水平往復揺動を確保し、目詰まり除去の顕著な作用効果を奏する点にあり、その構成、効果は、選別板(1)の裏面に左右方向に長く、それ自体は動くことのないゴム片(9)を取付け、これに浮ぶように設けられた網(5)がその傾斜に沿つて前後方向に傾斜往復揺動するに過ぎない引用例と本質的に相違する旨主張する。

前掲甲第三号証によれば、引用例には、穀類である米粒を選別するために、その供給側と排出側とを結ぶ方向を往復運動する篩(4)の底面に張られた網(5)の揺動方向に対して、直角方向に、目詰まり粒除去の目的のために、網(5)の裏面に摺擦し接触する、それ自体は動くことのない、渡片(10)に連続して数個添着したゴム片(9)を長く設ける構成が示されている。そして成立に争いのない乙第二号証(昭和一四年実用新案出願公告第七九五四号)によれば、従来技術として、製粉用篩装置として、同じく目潰(目詰まり)防止の目的で、供給側から排出側に前後方向に傾斜し左右方向は水平に設けられた篩網(2)の裏面に接触する刷子(6)を、前後方向に長く列設させたものを設け、この刷子(6)は篩網(2)の下面で左右に摺動自在とし、篩網(2)の左右方向水平の往復揺動に常に擦合わせる構成が知られていたことが認められるし、成立に争いのない甲第四号証によつて認められる周知技術の存在をも考慮すれば、前記引用例の構成において、穀類選別のための網を左右方向の水平往復の揺動とし、それ自体動くことのない目詰まり除去のために接触するゴム片ないし刷子のようなものを前後方向に長く列設させるようにして、原告がその特徴とする、選別板の裏面にそれ自体は動くことのないブラシを前後方向に接触させて取付ける構成を備えた本願発明のようにすることは、当業者が容易に推考することができるものといわねばならない。

そうして成立に争いのない甲第二号証によれば、本願発明は選別板(1)の水平往復揺動により、原告が主張するようなブラシ(3)との接触を終始完全に確保するような揺動の具体的機構をその構成要件とはしていないから、その構成によつて得られる目詰まり除去の効果も、前示のとおり、その構成が引用例、従来技術から容易に推考できる以上、同様に引用例、従来技術から予測できる域を出るものとはいい難く、格別顕著なものと認めることはできない。

そうすると、本願発明の進歩性を否定した審決の判断に原告主張のような誤りはないといわねばならない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の請求は失当として棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

次のA~Eの要件の結合からなる穀類選別装置。

A 俯瞰形状は矩形である多孔の選別板(1)を有すること。

B 該選別板(1)は、相対向する一側を供給側Hとし他側を排出側Lとし、排出側Lを低く傾斜させて取付けられていること。

C 該選別板(1)は、供給側Hと排出側Lとを結ぶ前後方向に対する左右方向は水平状態に取付けられていること。

D 該選別板(1)は、左右方向に水平往復揺動させること。

E 該選別板(1)の裏面には、前後方向に長く、それ自体は動くことのないブラシを接触させて取付けること。

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